コラム 2019年11月号
2019/11/01
「こころに森を育てる」 第4回
木育が食育のような広がりを持つにはまだ時間がかかりそうだが、近年特に機運が高まっていると感じている。特に木のおもちゃとしては、木のさわり心地、ざまざまな木目、木の音、木の香りなど五感をフルに使うことができるので、都市部の保護者に急速に「本物を触らせたい」という本物志向が高まってきています。
「木に高級感を感じる人が多い」「メンテナンスの心配があるが木製玩具の希望が多い」「木のおもちゃを使うことで差別化していきたい」との保護者のニーズに対応し始めている保育施設が増えていると先日参加した【保育博2019】で実施したアンケートの結果にも表れていました。
保育の世界では木育というものを取り入れていきたいとニーズを感じることができたが、木育の最大のターゲットである小中学生の場合、どうしても教育指導要領という大きな壁があります。
その壁は各市町ごとに状況が違うと聞くが、林業県である熊本県などは小学5・6年生向けのの木育読本があり、中学生は技術の授業の中で木育に触れる機会が用意されています。
小学校中学校の理科の中で草花のことは習いますが、木についてほとんど習いません。
先日某高校に行き、就職担当の先生方とお話しする機会がありました。
その話の中で、「前はあった林業体験が予算がないために行われていない」「農業のほかに選択肢として、林業を選ぶというよりも、林業について何も情報がない状態だ」ということを知り、木育の世界から高校生だけが取り残されているということに衝撃を受けました。
林業や木材に携わる事業の情報を知らず、それまでに体験したことがないものが将来の選択肢には成り得ません。
前回大人向けの木育のことを書きましたが、大人よりも担い手育成に一番近いと思われる農業高校の生徒にもっと林業や木について知ってもらう機会を増やしていきたいと思います。
来る11月9・10日に広島産業会館でひろしまの森づくり交付金事業(特認)「ひろしま木育シンポジウム~未来につながる木育~」を開催します。
広島で活動している木育や森や木に関わる団体の相互のつながりや情報交換と、他県の取組の事例を知り、保育・教育関係の方や各市町、企業の方にも参加していただいて異業種との連携や新たな関係性の構築を目的としています。
また、今後この木育シンポジウムをきっかけに、形にとらわれずゆるやかにつながっていけたらと思っています。