コラム 2019年9月号
2019/09/01
「こころに森を育てる」 第3回
先日、林野庁から「木育をはじめとする木材利用の普及啓発に関する事例集」が公表されました。ここには多岐にわたる「木づかい」と「木に関わる取り組み」が取り上げられています。しかし、まだまだ、木育(もくいく)という言葉自体一般にはあまり浸透していません。知っている人の中でも、約15年前に北海道で提唱されてから、木育の認識は木のおもちゃで遊ぶことや木工体験するという認識で止まっている人が多いのが現状です。
事例集には、木育マイスター育成や地域の子育て団体とコラボ、木工ワークショップ、行政主導の仕組みづくり、まちの森をアトラクションにした取組、生涯を通じた木育、未利用樹種使用の小学校の机寄贈、大学・行政・地域が連携した地域材の商品開発などの取組があり、その中の一つに一昨年、さとやま未来博2017のココロザシ応援プロジェクト採択事業として私の立案で開催した「森を遊びつくす大人旅」も掲載されました。
自分が木に関わっているにもかかわらず、体験したことないことがたくさんある、まあ単純にやってみたいことを詰めこんで、大人も子どもたちに遠慮せずに楽しめるものが出来たらいいな♪と、企画した1泊2日の大人のための木育イベント。1日目は伐倒見学、3倍力綱引き、チェーンソー製材体験、ネズミサシのスプーンづくり、焚火、スウェーデントーチ、竹きのこパン、バームクーヘン作り、クロモジ茶、グランピングテント体験、薪の石窯ピザ、ジビエに合うワインと地酒を楽しみ、広島ふるさと村みわの里に宿泊。2日目は鹿革と広島県の特許技術「圧密処理法」ヒノキを使った名刺入れやイスなどの木工をお昼まで体験して解散。あえて未成年以上を参加条件としました。その理由は、隠れテーマとして同じ森や林業、ジビエなどに興味を持つ男女の出会いの場となればとの想いから。結果はカップルが2組参加され、1組はその後結婚されました。他の参加者も相互に交流が生まれ、共感しあうことで新たな取組をスタートされた方もあり、濃いつながりになった人も。かく言う私も大人旅の参加者と現在、協力体制を築いています。参加は16名ながら、20代~70代と幅広く、男女も半分ずつ。体験後のアンケートでの15人が大満足、1名が満足。また全員が「次回も参加したい」との回答に本当に開催してよかったと心から喜びました。2日間に凝縮した濃い内容と焚火や自然の中での共通の体験を通じた異業種の参加者同士の会話が本当に楽しかったというのが、すべての人に共通する感想でした。また、この「大人旅」を後から知った方からの要望もとても多い。潜在的な需要はかなりあるものと実感しています。
個人レベルの想いがきっかけの事例として唯一掲載されたことは、木育普及委員会代表、技術士として広島県の木育の底上げを図り、進めていくことに自信を持てました。
すぐに林業や木材生産に関わる人材を増やすことにつながるものではないが、0.2%の意識改革を多くの人に伝えていきたいと想いを新たにしました。